2016/07/24

4.生理機能と多糖

先に紹介した多糖類の中でもβ-1,3-グルカンは、きのこに含まれる成分として伝承的に古くから知られており、抗腫瘍活性があることが報告されています。これらのβ-グルカンは、グルコースだけからなるホモ多糖類で、その結合様式の違いで機能性を有することが報告されています。

そもそも真菌類のβグルカン研究は、多糖の腫瘍免疫を増強し、抗ガンという観点から医薬品レベルで開発が盛んにおこなわれてきました。スエヒロタケから得られるシゾフィラン(Schizophyllan)とシイタケから得られるレンチナン(Lentinan)は、それぞれβ-1,3-グルカンにβ-1,6-側鎖を有するβ-1,3-1,6-グルカンを主成分とする、子宮頸がんならびに胃ガンや大腸ガンの注射薬の抗癌剤として、現在も製造販売されています。きのこ由来以外のβ-1,3-グルカンとしては、これもβ-1,6-分岐構造を有するパン酵母や黒酵母由来のものが有名です。既述のように最近では、免疫賦活システムの解明が進み、免疫表示細胞であるマクロファージや樹状細胞との受容体との解明も明らかになりつつあります。食品としては後述の腸管免疫システムとの関連研究も報告されています。

その他、分岐構造は有さずβ-1,3-結合とβ-1,4-結合の繰り返し構造を主鎖に有するカラスムギや大麦由来のものや、β-1,3-結合とβ-1,6-結合の繰り返し構造を有するラミナランのような海草由来のものが知られています。これらの直鎖上の複数の結合を有するβグルカン類は可溶性のものが多いのも特徴です。

特に大麦由来のβグルカン類は冠状動脈疾患や糖尿病などの生活習慣病予防との関連を研究した報告が欧米で多く、米国では2006年5月に米国食品医薬品局(FDA)は「冠状動脈疾患のリスク低減に役立つ」との健康強調表示を認めました。欧州でも2009年10月には「正常な血中コレステロール維持に役立つ」との健康強調表示が認可されています。国内でも機能性表示食品として届け出申請され、「コレステロールの低減効果と整腸効果」が訴求されています。βグルカンという多糖は興味深いことに、分子量数10万から数100万の巨大分子であるが、三重螺旋構造を取ることが報告されています。また、抗腫瘍活性と高次構造との関連が示されています。

最近の研究においてある程度の分子量は必要であることがわかってきましたが、立体構造との証明にはもう少し時間がかかるようです。

加えて、βグルカンの高次構造は、医薬品化合物やビタミンなどの難水溶性物質や物理的あるいは化学的に処理を施したナノ粒子マテリアル研究から、包接機能を基にしたホストゲスト研究でも注目されつつあります。その応用として、ドラッグデリバリー(DDS)システムやワクチンアジュバンド研究への可能性が出てきました。

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